【徹底解説】ホイールバックチェアチェアとは?

- 2024/10/31 11:00
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ホイールバックチェア

イギリスアンティークチェアの中で、ケントストアにご来店のお客様が必ず目に留められるホイールバックチェア。

ホイールバックチェアはイギリスを代表する『ウィンザーチェア』のデザインバリエーションの一つです。
まずはイギリスのカントリーチェアを原型とするウィンザーチェアのお話からしましょう。

ウィンザーチェアとは?

ウィンザーチェアとは、17世紀にイギリス、ウィンザー地方でろくろ職人や農民などのために作られてきた実用家具「カントリーチェア」が起源とされています。
ロンドンの西北西50キロ、テムズ川の支流に沿った、ハイウィカム(High Wycombe)という街でウィンザーチェアは誕生しました。
バッキンガムシャー地方の森林地帯に位置し小麦粉の生産加工地として有名でしたが、17世紀中頃から椅子の部材を集めて完成させる職人が増え、工房も増えていきます。

ハイウィカムはロンドンの北西地域に広がるチルターンズという森林資源が豊富な丘陵地帯に近かったので、木材の調達に功を奏し椅子づくりが盛んになっていきました。
18世紀にはいると、1733年に描かれたバッキンガムシャーのストウにある庭園の絵にウィンザーチェアの原型といえるチェアが登場、当時は屋外用の椅子として使われることもあったようで、その丈夫で座り心地が良いこと、比較的お手頃な価格であることから日用家具として広まっていきました。

18世紀に入り、オーストリアからイギリスに曲げ木の技術が伝わったことがウィンザーチェアにも大きな変化をもたらします。
この時代はまさに産業革命の時代で、大都市には次々と工場が建設されていきました。
都市部へと多くの人々が流れ込み、人口や住居が増加し、ロンドン市民の椅子の需要に応じてリーズナブルで実用的な家具であるウィンザーチェアが大量に生産されたのです。

『ウィンザーチェア』という名称の由来はわかっていませんが、ハイウィカムの南東約20キロにウィンザー城があるため、ロンドンの人々にとっては「ウィンザー城の方からやってきたチェア」と呼ばれた説が有力だそうです。

19世紀の初めからは公共施設(学校や市役所)やパブ、レストランなどの飲食店で使用され、また一般家庭では大人用や子供用を使用するようにもなりました。

パブなどの飲食店や一般家庭での使用に合わせ、従来のウィンザーチェアよりも小ぶりで丈夫なもの(ローバックタイプ)が急速に普及し、イギリス人の暮らしに溶け込んでいったそうです。

1750年代ウィンザーアームチェア
1750年代に製造されたウィンザーアームチェア
photo by:V & A Museum


ホイールバックチェア

ホイールバックチェア
車輪(ホイール wheel)のモチーフは当時の流行の最先端!
photo by:kentstore

ホイールバックチェアはその名の通り、背もたれの中心に車輪(ホイール wheel)をモチーフとしたスプラット(背もたれの中央部にある背板)を施したデザインのチェアです。
18世紀後半から人気を博し、ウィンザーチェアの代表的なデザインとして現在も愛されています。
人気のきっかけは19世紀初めに蒸気機関車が誕生したことも一つと言えるでしょう。
1780年頃には生産されており、1950年代までに生産されたウィンザーチェアの3/4がホイールバックチェアとも言われているそうです!



ホイールバックチェアの特徴

①ボウバック…背もたれ

フープバックとも呼びますが、曲木の様子が弓(ボウ bow)のように見えることからボウバックを呼ばれるようになりました。
ボウバックは、ウィンザーチェアの初期のデザイン『コムバックチェア』に次いで、18世紀中頃の1740~1750年ごろから製作されたと言われています。
人気が高まりコムバックに取って代わります。

ボウバックチェア
左;ダブルボウバック 右;シングルボウバック
photo by:kentstore


コムバックに比べ、背もたれのスティックやスプラットを取り囲むような構造は、デザイン面だけでなく、保護する役割や背中を包み込みようなもたれかかりやすさなどの実用的な面も兼ね備えています。


②座面

ホイールバックチェア座面
座るとフィットするので板座でも疲れません。
photo by:kentstore

初期は半円形が多くみられますが次第に四角~台形に近いフォルムへと移行していきます。
座板をサドル形に削っていますので座った際にヒップの収まりが良く座り心地の良さを実現しています。
座面の前方中央は鞍(サドル)の形状の名残と思われる盛り上がりが見られます。


③脚

イギリスで誕生した”ウインザーチェア”の特徴である、脚を座面に直接通したデザイン。

脚自体は挽物加工が多いですが、初期のウィンザーチェアは角材や手で削り出すものもありました。
ボウバックチェアが登場して間もない18世紀半ば頃はほとんどがシンプルな丸棒タイプでしたが、その後、丸棒にリング状のラインを入れたりテーパードでふくらみを持たせたり、装飾が施されるようになっていきます。
ホイールバックチェアではリング状のラインを入れたターニングレッグ(挽物加工)が多く見受けられます。背の装飾とのバランスが良いですよね。
珍しいものですとカブリオールレッグタイプも。

ほとんどのホイールバックチェアにはH型の貫が接合されており、シンプルですっきりとしたデザインでありながら、強度を高めています。
カウホーン(クリノリン)型はボウバックチェアの登場と同時に施されるようになり、曲木の技術が貫に応用されたと考えられます。

ホイールバックチェア脚
左;主流のH型の貫 右;希少なカウホーン型の貫
photo by:kentstore


④スプラット…背板

スプラットはイギリスのウィンザーチェアの特徴の一つとも言えます。
背の中央に美しいデザインが施されているスプラットのある椅子はホイールバックをはじめ人気が高いです。
ちなみにアメリカのウインザーチェアにはスプラットは使用されていないそうです。
ホイールバックのほかのボウバックチェアのスプラットのデザインとしては
▪フィドルバック:バイオリン(フィドル)
▪壺
▪お花:シスル(アザミ)
▪王冠
などがあります。

ボウバックチェアの背板
左;フィドル 右;シスル
photo by:kentstore



いわゆるシンプルながらも不思議な空気感をだすチェア。
素朴さと華やかさの2面性が感じられるのが人気の秘訣かもしれません。



ウィンザーチェアの歴史や物語、様々な種類についてご興味をお持ちいただけましたら…

活用術やお選びいただく際のポイントなども!ぜひこちらのページをご覧ください。


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photo by:kentstore

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