英国で受け継がれたアンティーク家具を未来へ遺し続けるために

20世紀から21世紀へと変わり、2000年というミレニアムで時代が変わる頃に、株式会社ケントを設立いたしました。
それは英国より日本に輸入されるアンティーク家具に一つの疑問と問題提起を投げかける形でした。
それまでのアンティーク家具のイメージは、高級品であり、歴史的要素から鑑賞目的の家具という位置づけが定説で、家具の状態が悪く実際に使用できなくても手を加える(修理をする)ことは、『アンティークの価値を下げてしまう』というものが一般的でした。
「ただ、果たして本当にそうなのだろうか? これらの家具は実用的には不向きで、観賞用として保存していくだけなのだろうか?」
「家具としての価値よりも、希少性や趣味嗜好で価格が設定されていないのだろうか? 」
ケントを設立するにあたり、これらは真っ先に解決したい疑問でした。
当時すでに20年以上アンティークの仕事に携わっている私は、アンティークの魅力には取り憑かれていましたが、日本における販売手法には多少の疑問を持っておりました。
『修復して使う』

『修復して使う』・・・その循環がアンティークです。
そして、国内での情報に頼らず本場英国に渡り、いくつかの疑問を解決する為にアンティーク家具を扱うショップ・ディーラー・ユーザーなどあらゆる方面から情報を収集しました。
そこで従来の考え方を覆す衝撃的な話を聞き、そして納得したのです。
「アンティーク家具に限らず、何十年も同じ状態で維持できるものなど世の中には一つも無い。
鉄も錆びるし、プラスティックだって色褪せる。
石だって丸くなるんだよ。
木でできた家具だって手入れをしなければ維持できない。
その逆に手入れもできないものは、いずれ寿命を迎える。」
「アンティーク家具は最初からアンティークだったわけではない。アンティークになることを願って作られたものだ。
すなわち、長く使う為に修理ができるように作られているということだ。
要するに修理をすることを前提に、修理がし易いように設計された家具である。
だから不具合が生じても修理をすれば再生しまた使える。
修理をする際に次の修理のことを考えて修理をするからまた修理ができる。
”修理しては使う”その循環が結果としてアンティークという冠をかぶれることになるんだよ。」
納得の答えでした。
日本は『アンティーク家具の墓場』だ

そして直後に衝撃的な一言を浴びせられたのです。
「しかし、日本は『アンティーク家具の墓場』だ・・・」
「日本は英国と違って消費文化だ。新しく良いモノは作るが古いものは大切にしない。
そうやって経済が回ってるのでしょう?所詮❝英国アンティーク家具❞といえども、それは売る時、買う時のコミュニケーションワードであって、何年か使用したらゴミにしてしまうのでしょ。
ゴミにしてしまうのは、販売側のサポート体制ができていないからだ。
英国には修理するクラフトマンもいれば、彼らを育てる学校もある。そして修理をサポートする組織や材料メーカーも存在している。その上で販売やトレードが行われている。
日本にはそれがない。だから、アンティークの墓場となってしまうのだ。」
耳が痛い話どころか、恥ずかしさと情けなさを強烈に感じた瞬間でした。
『アンティークの未来を繋げること』

私達ができること。それは・・・
『アンティークの未来を繋げること』そのとき私は決意しました。
「これだ!今からでも遅くない。自分たちの使命は、この英国で受け継がれたアンティーク家具を、未来へ遺し続けるために日本で出来ることをしよう!」
『未来に遺す』

英国の伝統を日本の技術力で、『未来に遺す』
それから私は、2年の歳月をかけて英国中を駆け回り、アンティーク家具を再生するための技術を教わり、材料をかき集めました。
そして英国の伝統を日本の技術力で未来に遺そうと心に決めて、ケントのアンティーク家具を2002年にスタートさせました。
受け継がれる技術、守り続ける歴史

月日が流れた今も、あの日かき集めた材料と情熱は、私たちの工房で変わらず息づいています。
私たちが向き合っているのは、単なる古い家具ではありません。
海を越え、時代を越えて受け継がれてきた「生きた歴史」です。
一つひとつの家具に宿る物語を尊重し、確かなリペア技術でその価値を次世代へ繋いでいく。
私たちはこれからも、この地でアンティーク家具の修復と向き合い、その美しさを守り続けていきます。