【徹底解説】1930年代 折衷様式(エクレクティックスタイル) 家具の特徴

- 2025/9/3 12:00
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英国家具の折衷様式(エレクティック様式)

イギリスのアンティーク家具の中でも、1930年代に生まれたものは特に多く見られます。
これは偶然ではなく、この時代ならではの背景があるのです。

1930年代は、家庭生活や住宅文化が急速に発展した大きな転換期でした。
人々は日常をより快適で豊かにすることを求め、家具は単なる生活道具ではなく暮らしを彩る存在として重要な役割を担うようになります。

しかし1939年以降、戦争による資材不足や工場の軍需転換で家具生産は大きく縮小しました。
だからこそ、1930年代に作られた家具は『戦前最後にしっかりと作られた家具』として今に残り、アンティークとして高く評価されているのです。

ここでは、その時代に生まれた「(エレクティック様式)」の家具デザインについてご紹介します。

ケントストア静岡本店内 ブリティッシュハウス
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産業革命以降の暮らしと折衷様式誕生の背景

1930年代イギリスの住居
1930年代イギリスの住居
photo by:fine my past uk


産業革命による社会的繁栄を背景に、イギリスでは中流階級の家庭が急速に増えていきました。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、交通網や工業化の進展により、都市だけでなく郊外にも住宅地が整備され家庭向けの住宅が増えていきました。
リビングルームやダイニングルームを備えた「家族向けの住まい」が広がりました。

こうした住宅の広がりは、必然的に家具の需要を押し上げます。
以前は富裕層の邸宅にしかなかったリビング用の家具やダイニング用の家具が、中流階級の家庭にも取り入れられるようになり、食事やくつろぎの時間、来客時のもてなしといった暮らしの場面ごとに家具が必要とされるようになったのです。 そこでは、ただ豪華なだけでなく「日常生活に合った大きさや機能性を備えた家具」が求められました。

このように、産業革命がもたらした社会の豊かさと中流階級の台頭が、1930年代の家具需要を大きく後押しし、折衷的で実用的なデザインが生まれる土壌となったのです。



ヴィクトリア時代と1930年代の折衷デザインの違い

ヴィクトリアン様式
ヴィクトリアン様式の家具
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」と聞くとヴィクトリア時代の家具を思い浮かべる方も多いでしょう。
ヴィクトリア時代にもチューダー朝から続くイギリスの伝統的スタイルを融合した折衷デザインが見られましたが、主に上級階級の邸宅向けで、さまざまな歴史様式や装飾を大胆に組み合わせた金具や彫刻、豪華な布張りなど、装飾の華やかさが最大の魅力でした。


英国アンティークの代名詞であるドローリーフテーブル
1930年代の英国アンティーク家具
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一方、1930年代に生まれた折衷様式は、一般家庭の暮らしに合わせて発展しました。
サイズや形は実用性を重視し、装飾も控えめに抑えられています。
伝統的な要素とモダンなデザインをバランスよく融合させ、食事や団らんなど日常生活に自然に馴染む家具として広く取り入れられました。

ヴィクトリア時代の折衷様式が上級階級向けに豪華さを競う装飾中心だったのに対し、1930年代の折衷様式は中流家庭の日常に寄り添う実用的な美しさを重視している点が大きな違いです。



アールデコの影響を受けた折衷様式の魅力

アールデコ調のイギリスアンティーク家具
1930年代イギリスのアールデコ調キャビネット
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1930年代のイギリス家具には、フランスから広がったアールデコの影響も色濃く反映されているものもあります。
直線的で幾何学的なフォルムや、洗練されたシンプルなラインが積極的に取り入れられ、従来の家具にはなかったモダンな雰囲気を生み出しました。
しかし同時に、イギリス人の保守的な気質が働き、伝統的な様式美も部分的に残されました。
脚部の装飾や引き出しの彫刻、木材の丁寧な仕上げなど、クラシックなディテールが随所に施されており、アールデコのモダンさに品格を添えています。
こうした融合によって、1930年代の家具は「新しさの中に伝統の落ち着きを感じさせるデザイン」として独自の魅力を確立しました。

1930年代の家具にオーク材が多い理由

ケントストア静岡本店
ケントストア静岡本店
photo by:kentstore


18世紀から19世紀にかけては、木目の美しさと優雅な雰囲気を持つウォルナットが高級材として人気を集めました。
比較的やわらかく加工しやすい性質を持つため、繊細な装飾や曲線的なデザインに適しており、キャビネットや小型家具などでその魅力を発揮しました。
一方、ヴィクトリア時代の豪華な家具に多用されたのはマホガニーです。
優雅な雰囲気を演出しますが、輸入材であるため価格が高く、1930年代の一般家庭にはなかなか手の届かない存在でした。
それに対してオークは、イギリス国内で豊富に産出され、非常に硬く耐久性に優れた木材です。
折衷様式やアールデコの直線的なデザインとも相性がよく、ダイニングテーブルやキャビネットなど日常使いの家具に最適でした。

このように、ウォルナットやマホガニーが上流階級のための豪華な家具に使われたのに対し、オークは中流家庭の実用的で堅牢な家具に広く取り入れられるようになったのです。




日本の住宅に馴染むサイズと魅力

ケントストア静岡本店
ケントストア静岡本店
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1930年代に作られたイギリス家具は、デザインだけでなくサイズ感も魅力のひとつです。
当時の中流家庭向けに作られたため、ヴィクトリア朝の重厚で大きすぎる家具とは異なり、日本の住宅にもしっくり収まるコンパクトさがあります。
リビングやダイニングに自然に置けるサイズ感は、現代の生活にも無理なく溶け込みます。

100年近い歴史とストーリーがあるアンティーク家具。
産業革命後の社会変化、世界恐慌の影響、アールデコの流行、イギリスらしい保守性――さまざまな背景を反映しながら作られた家具は、単なる道具ではなく「時代を映す物語」を内包しています。
その背景を知ることで、家具を見る目も変わり、暮らしの中でより愛着を持ってご使用いただけます。

1930年代の折衷様式家具は、そのデザイン・サイズ・歴史のすべてにおいて、現代の暮らしに溶け込む特別な魅力を持っています。

ユニオンジャックアイコン ケントストア オンラインショップ

ケントストア オンラインショップでは、修理前の家具もご覧いただけます。
ご家庭用のチェアやテーブルはもちろん、バーカウンターやショーケースなどの店舗什器も豊富に取り揃え、見るだけでもワクワクするラインナップです。
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【徹底解説】ヴィクトリアン様式 家具の特徴

バルーンバックチェア
ヴィクトリアン様式 建築物と家具の特徴
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エドワード7世の母であるヴィクトリア女王。
ヴィクトリア女王は、1837年に18歳にして女王に即位します。
その後63年間にもわたり、大英帝国の女王として、イギリスを世界の強国に成長させました。
ヴィクトリア女王の統治下(1837年~1901年)の建築物と家具のデザインを『ヴィクトリア()様式』といいます。
『ヴィクトリアン様式』の家具デザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。








 

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